監査法人にもAI化の波。公認会計士がAIに代替される時代?

ここ数年「AI」「5G」「ブロックチェーン」「IoT」「RPA」「FinTech」といった用語が話題になっています。これらの技術はもはや避けて通ることができません。会計業界にも大きな影響を与える存在です。

そのような中、『公認会計士の仕事がAIに代替される時代の到来』を叫ぶ声も聞かれるようになってきています。

ITの進化やAI化による世の中の変化など、現状を把握することでこれからの未来がどうなるか、AIをどのように取り入れ、何をすればよいかが見えてくるかもしれません。

「機械に奪われそうな仕事ランキング」 2位 が「会計士」

人工知能「AI」やソフトウェアによる自動化技術「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」の普及が進む中、「機械に取って代わられる仕事ランキング」「IT技術の向上でなくなる職業は?」といった記事を見かけた方も多いと思います。

そういった記事を読むと必ず上位に入る職業の中に「会計士」を多く見かけます。 雑誌「週刊ダイヤモンド」の2015年8月22日号※1に掲載された「機械が奪う職業・仕事ランキング(米国)」で会計士は2位にランク付けされました。

会計士の職務である正確な決算の遂行は、機械の方が大量の数値からすばやく間違いを見つけ、改善点も過去のデータから自動的に割り出し、提案ができるようになる、というのです。

確かに大量のデータ入力や、書類やデータから間違いを見つける作業は人の力や手作業では限界があります。時間もコストもかかり、効率的ではありません。しかし最終的には知識と経験を持つ会計士の手や目が不可欠です。すべての仕事が機械の取って代わられるのではなく、機械に任せられるものは機械に任せ、人間でなければできない、特に会計士にしかできない作業はこれからも会計士が担っていくことになるでしょう。つまりITと会計士の作業をバランスよく分担することで顧問先へさらに質の高いサービスを提供することができるようになるのです。

※1「週刊ダイヤモンド」の2015年8月22日号掲載

進められる監査法人のIT化

では監査法人のIT化の現状を見ていきましょう。

パソコンの普及が始まった1980年頃に登場したパソコン用の会計ソフトにより、監査法人・会計事務所のIT化が始まりました。パソコンの処理能力の向上によって会計ソフトの機能もアップ。さらにインターネットの普及が進み、監査法人・会計事務所と顧問先を直接つなぎ、データを共有することにより離れていてもリアルタイムでの監査やコンサルティングが可能になりました。

会計ソフト以外にも「税務申告ソフト」「法定調書ソフト」「固定資産管理・減価償却ソフト」なども会計士にとって強い味方です。

さらにここ数年で普及が進んでいるさまざまなクラウドサービスを顧問先に提案・導入することにより、導入コスト、ランニングコストや管理コストを抑えられるようになりました。今までかかっていた訪問時間や作業時間が短縮された分、さまざまな経営支援の企画・提案などの人間が考え動くことに時間を割けるようになったのです。

また監査法人・会計事務所内にも働き方改革が必要です。ITを利用した労働環境の整備、効率化をすることで、職員・社員が働きやすく、活躍できる場所を提供し、生産性を向上させることができます。

監査法人のあらゆる作業の効率化

では監査法人ではどのような対応をしているのでしょうか。

監査法人でもITの進歩や時代の流れに合わせ、IT化やAIの活用が進められています。日本国内の大手監査法人では「IT監査」の専門部署を設置するなど、IT活用の重要性が高まっていることがわかります。

中でも監査法人にとって重要な「監査調書」を電子化した「電子監査調書」はペーパーレス、スムーズな承認ワークフローの確立、監査手続の工程管理、審査など多数の顧問先とのやり取りや監査法人内の業務フローの効率化を実現します。

また特に期待されているのがAIです。例えば今までは熟練された人の目で判断していた作業もAIが膨大なデータから学習し、効率よくスピーディに間違いを発見したり、データ分析や予測の精度を高めたりといった事例も存在します。

そして最終的な重要度の高い作業・判断を人が行うことで今まで以上に質の高い監査ができるようになります。またさまざまなデータをスムーズに電子化・共有することで監査法人内の働き方改革も推進できるなど、あらゆる業務・作業がIT化によって進化していくことが予想されます。

会計士と同様にITと監査法人にしかできない監査業務を融合させることで、顧問先にとっても監査法人にとってもより効率的で効果的な監査を実現することができるようになります。

監査法人のAI化についてはこちらも御覧ください-「AIで監査を効率化。仕組みと現状」

 

まとめ【知識さえ身につけていけば、AI自体は脅威ではない】

近年のITの向上は会計士の職を奪うものではなく、ITと会計士のスキルを合わせることにより、今まで以上に会計士の重要性が認識され、会計士は今まで以上になくてはならない職業となる、と考えられます。

2019年に行われた「会計士白書」と呼ばれる会計士約1,000人を対象としたアンケート調査※2でも、過半数が「AIは脅威ではない」と回答しています。最終的に人の手でないとできない部分がある、という認識が背景にあるようです。

しかし現状通りの会計士の役割を果たせばいい、ということではありません。会計士、そして人でなくてはできない部分を磨いていく必要があります。

会計、経済、ビジネス、コンサルティング、ITの知識はもちろん、プレゼンテーション能力やコミュニケーション能力、理解力、発想力、思考力など、プラスアルファのスキルが必要となってくるでしょう。

会計士業界での競争も激しくなる可能性もあります。そんな中で難関試験を突破し、会計士を目指す方にはスキルと知識を身につけ、経験を積み、顧問先の立場になって考える人物像が求められるのではないでしょうか。顧問先からの信頼を獲得し、顧問先の成功を共に目指し、勝ち取れる会計士がこと生き残っていくのではないでしょうか。

※2「会計士白書2019年度版」(株式会社CPAコンパス)(https://kaikeishinorirekisho.com/cpahakusho2019/)

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